⑴ 作品において、時代や場所はどのような点で重要だと考えますか。
(社会的、文化的背景は、作品にどのような影響を与えるでしょうか。)
社会的・文化的背景があってこそ主題が出来上がる。
舞台がどちらも極限状況に陥ってる場面で、それらがより宗教に救いを求める人たちが作品ないで強調される。
沈黙:舞台ー鎖国(日本孤立状態)
共通点
- ・社会と文化的背景は主人公を精神的に追い詰めている
- ー沈黙:宗教・国民性の違いによって隔離される
- ー罪と罰:国民性の違いによって孤独になってしまう
- ・外部との関わりで自国の宗教が出来上がった
- ・貧困と極限状態で宗教に縋り付くことになる・心のよりどこりになる
- ・時代についていけなかった、恐れた人たち
日本の国民性:集団で動き、連帯責任で自分も捕まってしまう。常に集団に捕らわれ、それが主人公を追い詰め、罪悪感を感じさ、精神を壊すことになる。
他国との関係性:罪と罰の時代背景、他のヨーロッパ国より遅れている。国の変革が作品に関わってくる。
・沈黙:日本
- ー鎖国中であるためにキリスト教が広がることがない。ヨーロッパのキリストの概念がそのまま伝わってくる限り、根付くことはない。他国から自分たちの知らない情報・主教がくることに対しての恐れがあったため、キリスト教を弾圧する。
- ー農民の苦しい生活・極限状態になってしまって願ったのが極楽浄土へ行くこと。現世にない幸せを求めたため、農民たちは得体の知れない、いろいろな価値観が混ざった宗教が出来上がってしまう。
- ー見せしめによって心の弱い人たち(神にすがるものたち)を利用する
- 違う価値観で個人の心にある様々な信仰の形があることに行き着き、キリスト教を離断する
・罪と罰:ロシア
- ーほかの西洋に比べると近代的に遅れていて、改革真っ只中であった。ロシア正教会が政府や国を抑えていることについての疑問が浮き始める。
- ー神に祈るのではなく、大地に身を捧げる・謝ることが大事とされた。農民や大地に深い関わりがある為、キリスト教が広まらなくなった。
- ー序盤から人を殺し、重罪を犯してしまったことで極限状態にロドリーゴを陥れ、最終的には神、宗教に救われる
- 信じるものは救われる・生まれ変わることができるという考え方に行き着く。
⑵ 作品において視点の用い方は、どのような効果をもたらすでしょうか。
罪と罰:視点
- ・主にラスコーリニコフの視点で進められる
- ・彼の心情がよく描かれている
- ・三人称によって登場人物たちの思考や動きを客観的に見れる
予告された殺人の記録:視点
- ・視点の飛び移りが多い
- ・時系列も変わる
- ・いろんな視点が入っているせいか、読者には誰が正しいのかわからない
- ・多文化国家
共通:
- ・変身ー視点の用い方が似ている
- ・三人称だけど心情がよく見える、心内語
- ・多くの登場人物たちが自分の価値観を話していく
⑶ 感覚的なイメージは、物語を進める上でどのような効果があるでしょうか。
罪と罰:
- ・ラスコーリニコフの精神的描写が多かったー不調や気持ち悪さ
- ・老婆を殺すシーン
- ー「戦慄のようなものが体を走った」
- ー「血の水たまり」
- ・ラスコーリニコフの視点
- ・彼の汗や焦りを描写
- ・彼に感情移入させたい意思
- ー彼の精神状態をリアルに教える
雲雀の巣:
- ・触覚や皮膚の感覚(温度)の細かい説明
- ・「卵がやぶれた」ー柔らかい、生暖かい卵のイメージ
- ・生々しい
- ・リアリティ、迫真生
沈黙:
- ・写実的に描かれている
- ・拷問のシーン
月に吠える:
- ・精神的ー追い詰められているシーン
- ・主人公の感覚を読者に感じる為にそういった効果を出す
バクテリア:
・細かい描写ー口や鼻の説明が多い
予告された殺人の記録:
- ・サンティアゴの細かい、恐ろしい殺人描写
- ・「脇腹を深く突き刺さった」ー刺された場面を描く・肌に食い込むナイフの感覚(触覚)
- ・「血が噴き出す」ー勢い、迫力がある(視覚)
- ・「子牛に似た悲鳴」ー傷の痛みを聴覚でも再現
- ・最初のサンティアゴの死の暗示ー先行きの不安
- ・ルポルタージュ形式での記述
- ・客観的な視点からの五感描写(作者の意図)
- ・色々な視点から物事を説明、多方面
- ーマジックリアリズム
- ・感情移入目的じゃなく、いかに読者に衝撃を与えられるか
- ・よりインパクトの強いものにする
- ・最後にどう死んだかはっきり描かれる
- ー謎掛けで終わる(本当かどうかわからない世界に読者に見せる)
なめとこ山:
- ・擬人法
- ・「吸ったり吐いたり」
- ー視覚や聴覚を使って小十郎の状況を描く
*実話ー現実味のある表現でより読者を作品に誘い込む
⑷ 飢えや渇きや喪失がしばしば描かれますが、これらの要素は作品中でどのような役割を
果たしているでしょうか。
ゴドーを待ちながら:
- ・人間の内側の葛藤
- ・ヴラジーミルとエストラゴンのアイデンティティーの喪失
- ー自分自身が何者かがわからないという虚無感
- ー自身の存在意義
- ・外部と内部の世界
- ー将来や生きる希望を失った人たちの精神世界が反映されている
- ・希望の喪失
- ーゴドー=希望を待ち続けることしかできない存在
- ーほかに生きる理由がない
共通点:
- ・極限状態に置かれた人たちの状況
- ・理性を失う(正確な判断に影響が出る)
- ・意思の喪失
- ー人間の本性を曝け出す;飢えや渇きに繋がる
- ・登場人物の設定
- ー飢えや渇きを表現するために極限状況を作り上げる
- ーラスコーリニコフの貧困、エストラゴンとヴラジーミルのゴドーを待ち続ける姿勢
- ・読者の作品の成り行き
- ー登場人物の葛藤が伝わる
- ー彼等の置かれた厳しい、追い詰められた状況は犯してしまった行動を正当化するのか
- ・エゴイズム
- ー欲望と理性の戦い
夕鶴:
- ・つうがいるにもかかわらず、都会への憧れで彼女を失うことになる
- ・飢えと渇き
- ・人間は社会的な動物;人との関わりを欲する、一人で生きていけない
- ・性別の役割ー基本的に男性は社会、女性は家
- ・社会的に恵まれていない状況から始まる
- ー人の欲望;飢えや渇きによって起こってしまった悲劇
- ・愛するものの喪失につながる
⑸ 自伝的な意味合いをもつ作品(作者の経験が反映されている)作品の中で、作者は自身
の人生から何をどのように切り取り意味付けていると考えますか。
罪と罰
- ・ラスコーリニコフと似た環境;貧しくて、不安定な精神状態が作者にも当てはまる。
- ・ソーニャのようなしっかりとしていて、かつ自分を献身的に支えてくれる女性と出会うー作品中の強い女性像と重なる。
- ・アルコール依存症のソーニャの父(マルメラードフ)、ソーニャに言いよるスヴィドリガイロフなどの登場人物が作者の父と重なる。父への嫌悪感が登場人物の描写に繋がっている。
- ・死刑宣告を受けたことがある作者の、その時の心理状況を元にラスコーリニコフの心情を描いている。
なめとこ山の熊 宮澤賢治
- 小十郎の信じる、「動物と人間が平等である」という考えは作者と同じ。 – 日蓮宗の法華教
- 作者の信じる仏教的思想や、思い描いているイーハトーブ(理想郷)の世界観が作品に強く反映されている。
- 荒物屋の主人の商売は、作者の商家の仕事に似ている。 – 貧しい人から安い金額で商品を買取り、そこから利益を出す。
- 自然の摂理の中では、人間と熊とは平等
- なめとこ山と熊の一体性の表現ー「森までもががあっと叫んで」
- もし小十郎が最後まで生きたまま物語が終わっていたら、人間と動物が平等という作者の意図に反するようになってしまう。→因果関係
- 「小十郎は笑っているように見えた」ー殺生をしなくて済むという安堵感の表れ
沈黙 遠藤周作
- 作者自身の弱い部分をキチジローやロドリゴに投影している。
- 遠藤周作の最大のテーマとなった葛藤「日本人でありながらキリスト教である矛盾」を沈黙を通して伝えている
- 日本人と西洋人の価値観の違いやキリスト教が日本では根付かない理由
- 作者自身の宗教、キリシタンであることへの疑問
- 「自分はどのような状況でも信仰し続けることができるのか」という作者の自分自身への疑問の投げかけ。
月に吠える ー 萩原朔太郎
叙情詩:自分で自分をコントロール出来ない部分に困惑、不安を持っており、詩に自分の思いを書き下ろすことで、共感を求めている。
- 自分が男なのに、なぜか他の男に惹かれる自分に困惑。
- この自分でも分からない人格が自分の中に存在する
- 自分の中に存在する病的な人格に対しての、恐怖、困惑、疑問が描かれている。
「見知らぬ犬」に自分を仮託
自分のことなのに分からない部分があるため、困惑や不安が犬の言動を通して読者に伝わる。
予告された殺人の記録 ガルシア=マルケス
作者の取材した実際の事件を元に作品が出来上がっているー作品の「私」は作者のよう。
*クラスで共同作成