罪と罰 まとめ

  設定 ⑴時 19世紀半ば、奴隷解放令の5年後。世俗による権力による改革が推し進められる中で国家の政情は不安定。さらに、貧富の差が拡大、顕在化。治安は乱れ、国政に対する市民の不満が渦巻いている。時の皇帝アレクサンドル2世の暗殺計画が取りざたされるなど、不穏な空気が満ちていた。 ⑵場所 首都サンクトペテルブルク 通りの描写  おそろしい暑さ、雑踏でひどい人いきれ、どこを見ても石炭、材木、煉瓦、土埃。言うに言われぬ夏の悪臭、居酒屋からの鼻持ちならぬ臭気、たえず行き当たる飲んだくれの姿…. ⑷人称  視点 三人称であり、主にラスコーリニコフの視点から物事が書かれているが、スヴィドリガイロフやルージン、ラズミーヒンなどの周りの登場人物の視点を取ることもある。 (例)ルージンの視点から結婚や女性に対しての考えが暴かれている→ラスコーリニコフ以外の登場人物の視点も三人称を通して描くことによって、様々な登場人物の本性が現れる -三人称で書くことによって、ラスコーリニコフの行動、感情、考え等全てがわかる。ロドリゴの異端な考えも客観的に見ることで、より以上であることが伝わる。 ⑸主題 宗教:有神論、無神論 社会的格差(貧困、性差) エゴイズム 人間のモラリティ 思想やその影響:ニヒリズム(正当化される殺人) 極限状態(精神的+社会的) ⑹伏線 冒頭から不安定な精神状態を描き、老婆を殺そうとしている計画をほのめかしている。 「リハーサル」(p10) マルメラードフ:ラスコールニコフとのパラレル、彼も母とドーニャの犠牲によってお金を得ていることが暗示されている。 下巻452ページ:「スヴィドリガイロフの様子には…どことなく変わったところがあったはずである。」 これから起こる出来事の暗示、不穏な空気を作り上げている。 ⑼回想 登場人物や過去に起こった出来事を回想し、対話のシーンで説明されている。 2週間ほどの期間にわたるこの物語が、短く短縮されている。 そぜぞれの人物が立った状況で、過去の出来事を語ることにより、読者がその事件に集中できている。 ・「彼女はいつも彼におずおずと手を差し伸べた」(p.577) 最後に罪を償うことができ、二人がお互い愛し合ってることがわかった後に、最初にあった頃を思い出してどこまで二人の関係性が変わったかわかる。最初の頃は怯えていたが、今だと愛して、信頼している仲。 ・「部屋でうとうとしていた時の最初の対面」 (p.405)  ラスコーリニコフとスヴィドリガイロフのはじめにあった時の短い回想。 ・「ぼくは貧しい病身の学生です」(p.207) 借金の返済を要求された件について。どう借金から逃れようと彼の家族や貧乏暮らしの回想が入る。 ・「一昨日の晩方、」(p.280) ペンキ屋の事件の詳細ー回想。 ・「彼は不意にソーニャの言葉を思い出したのである。」(下p.536) ラスコーリニコフがセンナヤ広場に行き、罪を償おうという意識が確実になった瞬間。彼は罪の意識に囚われた苦しい生活からの出口を求めるように、強いソーニャの言葉を思い出した。 ・「さまざまな想念が次々と入れ替わった。」(下p.492) スヴィドリガイロフが自殺する日の夜、熱に浮かされながら様々な記憶や考えが浮び去っていく様子。彼は特にドゥーニャの姿を忘れることができない。謎の多いスヴィドリガイロフの内面が垣間見える場面でもあり、熱やショックによる彼の精神の不安定さを表している。 ⑺表現 〈文体〉 語り口調: 3人称:客観的の視点 しかし、ラスコーリニコフの心情は露わになっている 上192ページ:<聞かれたら俺は言ってしまうかもしれぬ> → 唯一主人公のラスコーリニコフの心情が表されていることで、物事を彼の視点から見る 同時に作品全体を客観視することで、主題が浮き彫りになる 〈技法〉 微細な情景描写=写実的描写が効果的  ・読者に臨場感を与え、物語に引き込む。 […]

Paper 2 ディスカッション

⑴ 作品において、時代や場所はどのような点で重要だと考えますか。   (社会的、文化的背景は、作品にどのような影響を与えるでしょうか。) 社会的・文化的背景があってこそ主題が出来上がる。 舞台がどちらも極限状況に陥ってる場面で、それらがより宗教に救いを求める人たちが作品ないで強調される。 沈黙:舞台ー鎖国(日本孤立状態) 共通点 ・社会と文化的背景は主人公を精神的に追い詰めている ー沈黙:宗教・国民性の違いによって隔離される ー罪と罰:国民性の違いによって孤独になってしまう ・外部との関わりで自国の宗教が出来上がった ・貧困と極限状態で宗教に縋り付くことになる・心のよりどこりになる ・時代についていけなかった、恐れた人たち 日本の国民性:集団で動き、連帯責任で自分も捕まってしまう。常に集団に捕らわれ、それが主人公を追い詰め、罪悪感を感じさ、精神を壊すことになる。 他国との関係性:罪と罰の時代背景、他のヨーロッパ国より遅れている。国の変革が作品に関わってくる。 ・沈黙:日本 ー鎖国中であるためにキリスト教が広がることがない。ヨーロッパのキリストの概念がそのまま伝わってくる限り、根付くことはない。他国から自分たちの知らない情報・主教がくることに対しての恐れがあったため、キリスト教を弾圧する。 ー農民の苦しい生活・極限状態になってしまって願ったのが極楽浄土へ行くこと。現世にない幸せを求めたため、農民たちは得体の知れない、いろいろな価値観が混ざった宗教が出来上がってしまう。 ー見せしめによって心の弱い人たち(神にすがるものたち)を利用する 違う価値観で個人の心にある様々な信仰の形があることに行き着き、キリスト教を離断する ・罪と罰:ロシア ーほかの西洋に比べると近代的に遅れていて、改革真っ只中であった。ロシア正教会が政府や国を抑えていることについての疑問が浮き始める。 ー神に祈るのではなく、大地に身を捧げる・謝ることが大事とされた。農民や大地に深い関わりがある為、キリスト教が広まらなくなった。 ー序盤から人を殺し、重罪を犯してしまったことで極限状態にロドリーゴを陥れ、最終的には神、宗教に救われる 信じるものは救われる・生まれ変わることができるという考え方に行き着く。   ⑵ 作品において視点の用い方は、どのような効果をもたらすでしょうか。 罪と罰:視点 ・主にラスコーリニコフの視点で進められる ・彼の心情がよく描かれている ・三人称によって登場人物たちの思考や動きを客観的に見れる 予告された殺人の記録:視点 ・視点の飛び移りが多い ・時系列も変わる ・いろんな視点が入っているせいか、読者には誰が正しいのかわからない ・多文化国家 共通: ・変身ー視点の用い方が似ている ・三人称だけど心情がよく見える、心内語 ・多くの登場人物たちが自分の価値観を話していく   ⑶ 感覚的なイメージは、物語を進める上でどのような効果があるでしょうか。 罪と罰: ・ラスコーリニコフの精神的描写が多かったー不調や気持ち悪さ ・老婆を殺すシーン ー「戦慄のようなものが体を走った」 ー「血の水たまり」 ・ラスコーリニコフの視点 ・彼の汗や焦りを描写 ・彼に感情移入させたい意思 ー彼の精神状態をリアルに教える 雲雀の巣: ・触覚や皮膚の感覚(温度)の細かい説明 ・「卵がやぶれた」ー柔らかい、生暖かい卵のイメージ ・生々しい ・リアリティ、迫真生 […]

罪と罰 作者の背景(と作品との関係)

幼少期 〜 大人まで 貧民救済病院の医師の子供 家族の影響によって自分も信仰心が厚かった。 15歳のとき母が死ぬ (母性の不足→家族と離れて暮らすラスコーリニコフに似ている?) 作者が18歳の時父が恨みを買ってしまい惨殺される 父はお金があって愛人を作っていた上、使用人をこき使っていた。作者はおそらく父が嫌いだった。(スヴィドリガイロフの描写と似ている) 軍の技師になるため学校で訓練を受けたが、学校を嫌い文学に興味を持った結果、卒業してからは作品を書き始める。 作家になってから 若かりし頃の作品は独特な表現や不安定さと共に情熱をも感じられる。 作品があまり売れなくなったことから実験を繰り返すようになり、この頃の彼の作風は様々である。サークルに入ったのもこのあたり。 23歳の時革命思想家のサークルに接近したことで逮捕され死刑宣告されたが、結局実行されず監獄に4年間入れられた 死刑宣告を真剣に受け止めることはあまりなかったが、一度そのように覚悟した時の自分の恐怖や精神の震撼などの心理状況を彼は忘れることがなかった。(これは狂ったラスコーリニコフの心理描写にも大きく貢献している) シベリアで出会った妻と結婚したが、幸せな結婚ではなかった上、妻は病気がちだった。 このため、セント・ピーターズバーグに一度戻る。 この時彼は貧しく、不健康な上、精神状況も不安定だった。若い女性との恋愛もし、1年間現実から逃避するため国外に行っていたこともある。(ラスコーリニコフの状態) 妻が亡くなった後再婚をし、彼により良い環境を提供することができた。(救いの女性、ソーニャのような存在) この二年後「罪と罰」を出版し、成功を果たす。 彼の作品の特徴 どれも事件や犯罪を描いている、またそのようなことをする人間の心理を細かく描いている。 人が抱える秘密や人間が持つ悲劇性を扱っている。(罪と罰では、過大な自尊心により自分の行為を正当化し、罪を認めることができなかったこと) 人間の普遍的な性質(欲望、自尊心、不条理)を模索している。 彼の思想 ロシアの小説家、思想家 社会主義や知識主義を否定、反ユダヤ主義者   *こころさんとの共同作成